vol.07 - CKD株式会社

奥岡社長について

学生時代

学生時代

吉田

奥岡社長はどのような学生時代を過ごされましたか?

奥岡

私は、自身の出身地である名古屋の大学に進み、電気電子工学を専攻していました。友人とグループを組んで和気あいあいと実験に取り組んだことを覚えています。ですが学業よりもよく覚えているのは、冬場は毎週のようにスキーに行き、シーズンオフは友人とビリヤードをしていた思い出の方ですね。

入社されてからのお仕事

入社されてからのお仕事

吉田

会社に入られてからは、どのようなお仕事に携わってこられたのでしょうか?

奥岡

入社後は、社内の自動化設備などを開発する部隊で、生産技術関係の電気設計をしていました。

当時のシステムでは、オーダーの詳細を生産側に伝達しきれないという状況があったのですが、情報をダイレクトに工場に伝えるため、バーコードですぐに検査設定ができる設備を立ち上げるなど、自動化設備を中心に当社で初めての試みにも挑戦していました。

吉田

今、自動化の流れがきていますけども、最先端でやられていたのですね。

奥岡

当社もその当時は自動化が遅れていたのだと思います。そのため、特に目を向けて取り組む必要があると考えました。

その後、基幹システムに興味を持ち、商品の移管プロジェクトをきっかけに生産技術から生産管理へ、その後工場管理の部門に移りました。そして生産企画、事業企画などの企画部門に移り、一時的に基幹システムにも携わりながら企画の仕事もやり、本部長を経て、その後本社を経験し、現在に至ります。

入社されてからのお仕事

吉田

生産管理の方もご経験されたということは、ERPシステムなども導入されたのですか?

奥岡

はい、5年ほど前にSAPを導入したのですが、苦労しましたね。

それまでは、生産管理システムを私たちのモノづくりに合わせていましたが、今度は私たちのモノづくりをERPに合わせるためにデータを標準化する必要ができました。たとえるなら、今までオーダーメイドの服を着ていたのが、既製品を着られるように体をスリムにしなくてはならなかったということです。社員からの反対もゼロではなかったため、まずそこで苦労しました。

 

それ以上に苦労したのは、導入後にデータやシステムの問題が発生し、納期も大幅に遅延して大混乱を起こしたことです。私自身は年末年始からゴールデンウィーク明けくらいまで休みなしで各工場へ行き、対応していました。社員のみんなも頑張ってくれて、一丸となってやりきるという気持ちが生まれたのはよかったですね。また、導入当時は納期遅れを出してお客さまにもご迷惑をおかけしましたが、営業部門が日ごろのお客さまとの信頼関係で支えてくれて、本当に感謝しましたね。

 

吉田

大きな山を乗り越えられましたね。当社も数年前にERPを導入しましたが、やはり大変でした。カスタマイズをしていては費用もかかるものですから、業務をERPに合わせようとしたのですが、結構大変で。従来のシステムを動かしながらERPも動かしてテストを行い、問題点の洗い出しを1年間、各部門で行いました。本稼働時に大きな混乱はなかったですが、テストの工数は相当かかりましたね。

でも、御社のERPは今も安定されて。

奥岡

今は逆に、当社の武器ともいえるほどに情報の精度も上がりました。正確にインプットすれば、アウトプットも必ず正確に出てくるので、情報がわかりやすく正確に見えるようになりましたね。経営判断の迅速化にも寄与していると思います。

強み、"Creating Solutions Together"について

御社の強みについて

御社の強みについて

吉田

製品やサービスへのこだわり、CKD株式会社の強みについてはいかがですか?

奥岡

自動機械も機器も同じなのですが、高精度、高耐久、クリーンにこだわった商品であるということをいつもお伝えしています。

「大量に安く」ではなく、お客さまの困りごと一つひとつに合わせて、空気圧機器や電動機器、流体制御機器などを組み合わせて、体系的に対応しています。また、高耐久によって廃棄物を減らし、お客さまの生産性を上げることは社会にとってもよいことという考えのもと、究極の高耐久のエア機器を目指し、基礎技術から取り組んで開発しました。

吉田

それは素晴らしいですね。個人的に思うのですが、日本のモノづくりはそこが大事な気がします。日本のモノづくりの特徴でいうと高品質、安心、安全なものを提供するところで、それはこだわりたいなと。我々も測定機のメーカーとして、測定結果にいい加減なことがないようにどのようにすべきか、いつも考えております。

奥岡

そこを大切にしたいですね。そうでないと我々は生き残っていけません。

ブランドスローガン

吉田

今年作られたブランドスローガンについてもお聞かせいただけますか?

奥岡

今年創立80周年を迎え、これを機に社員の想いの軸を作りたいと考えたのがきっかけです。当社はもともと、戦闘機の部品を作るために大手企業5社からの出資で設立された国策会社のため、創業者の想いというものがありませんでした。そこで、これを機にパーパスとブランドスローガンを作りたいと考え、国内外の性別、世代の異なるさまざまな社員を集めてプロジェクトを立ち上げました。最終的に3つの候補について全社員で投票した結果、"Creating Solutions Together"に決まりました。

これには、"お客さまやビジネスパートナー、CKD社員とともに、創造性や革新性を持って、自動化技術の探求と共創を深め、環境社会の課題を解決し豊かな未来を拓く"という想いが込められていて、これを大切にしていこうと思っています。

吉田

100周年を迎えられたときに、80周年のときの社長はこういうものを作ってよかったなと、そうなるとよいですね。

サステナビリティへの取り組み

CKD株式会社のサステナビリティへの取り組み

CKD株式会社のサステナビリティへの取り組み

吉田

サステナビリティについては、御社はどのように取り組まれていますか?

奥岡

事業として取り組んでいるのはいくつかあります。

SDGsのゴールのうち、「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」に対応するリチウムイオン電池の巻回機。それから「すべての人に健康と福祉を」に対応する薬品包装機やライフサイエンス機器。

 

そして「ジェンダーの平等を実現しよう」に対応する空気圧のバランサーですね。助力装置で重いものを軽くし、女性でも、ご高齢の方でも現場で働けるようになります。

 

それから「飢餓をゼロに」への取り組みとして工場にビニールハウスを建てて、スマート農業に取り組んでいます。農家の方が遠隔で操作できるアプリケーションなどのシステムも開発し、例えば、家に居ても遠隔で潅水(かんすい)のバルブを開けることができます。最終的には「農家の方に休日を」が合言葉です。工場のファクトリーオートメーションの技術は、農業、漁業などの第一次産業にも活用して貢献できると思います。

吉田

次の事業の芽になるかもしれないですね。

奥岡

これは利益とは別で、技術で社会に貢献しているということがわかりやすく、社員に浸透すると社員のモチベーションにもなりますし、エンゲージメントにもつながると思います。

吉田

いいですね。ESGの切り口での開発の取り組みは非常に参考になります。

脱炭素

吉田

脱炭素に関して力を入れていることはありますか?

奥岡

製品での取り組みに加えて、生産性の高い設備やLED照明への置き換え、太陽光発電の設置を進めています。また、高耐久の機器を作る工場はグリーン電力を導入しました。作る上でもCO₂を出さないというところを年々強化しています。

CO₂削減目標は、2030年に2022年度比実質送料半減、2013年度比で原単位半減という2つの目標を掲げています。あとは国の目標でもある2050年にCO₂排出量実質ゼロですね。

社員の方に向けた取り組み

吉田

社員の方に向けた取り組みについてはいかがでしょうか?

奥岡

前任の社長が本当に一生懸命実行していたので、しっかり継承していこうと取り組んできました。コロナ禍では危機管理委員会を立ち上げて、在宅勤務や時差出勤、一時的に車通勤を許可するなど、働き方の見直しを行いました。導入の結果、生産性は変わらずむしろ上がるくらいでしたし、小さなお子さんを抱えている社員も制度を上手に活用しているので、在宅勤務の制度などは今でも残しています。

 

また、本社の正門を入ってすぐ左側に企業内託児所があります。ダイバーシティを追求していく、その象徴として建てました。場所を決める際に、会長の「会社の正面に」とのこだわりで正門のすぐ横に建てました。今となっては、何かあってもすぐに見に行けるので安心だということで、社員に喜んでもらっています。リクルートでも優秀な女性の方の入社が増えました。

測定機とのかかわりについて

測定機に求めること

測定機に求めること

吉田

御社では測定機を多くお使いいただき、ありがとうございます。測定機に求めるもの、どういう用途で、どういうところで使われているのか、今後求めたいことなどお聞かせください。

奥岡

CKD株式会社の強みとして高精度、高耐久と言っていますが、これを実現できるのは測定機のおかげです。開発して評価するところには必ず東京精密の測定機があり、私たちの技術を下支えしていただいています。開発や品質管理、あってはならないですが予期せぬ不具合を分析して信用をつかむためにも測定機の力が必要です。それがないと語れません。

吉田

そうおっしゃっていただけると、精密測定機器メーカーとしては嬉しい限りです。

御社にはかなり昔からいろいろな形で導入いただいています。

奥岡

測定機のお付き合いというのは、本当に昔からだと思いますね。

1980年代半ばに、東京精密の半導体製造装置で採用いただいた当社のバルブに不具合が出たとき、東京精密の技術の方に指導いただき、バルブの耐久度を上げる改善に一緒に取り組んでいただきました。その際に、東京精密の測定機で測定して、1000万回の耐久試験を日本で初めてクリアするなど御社の知恵もいろいろお借りしました。

今回の対談にあたって営業からこの秘話を聞いて、現在高耐久と言っていますが、ご迷惑をかけた上に御社のいろいろな技術の力もお借りして達成できたのだと、しみじみ話しました。

吉田

そんなことがあったのですね。CKD株式会社の空気圧関係や流体制御機器は装置の大切なベースになりますので、ぜひ今後ともお付き合いさせていただきたいと思います。

X線CT装置の導入

X線CT装置の導入
画像はイメージです

吉田

2023年にX線CT装置も導入いただいています。どのような役割を想定して導入されたのでしょうか?

奥岡

バルブの機能部品の一番重要な部品の寸法を測定しているのですが、部品を切断して断面を測定しようとすると、12工程あるらしいのです。しかし、今回のX線CT装置を導入した結果、12工程が1工程となり、3人工の省人化を実現できました。また、スペースも3分の1に圧縮できるとのことです。

吉田

狙い通りの結果が出せますよう、我々も全力でバックアップさせていただきます。なんでもおっしゃってください。

東京精密への要望

吉田

東京精密へのご要望はございますか?

奥岡

東京精密に期待することは非常に大きいです。CKDでは気体や液体も扱うものですから、今まで見られなかった、測れなかった、そういったものに果敢に挑戦してもらいたいですね。また、接合や接着の状況を緻密にみられるようなものがあればよいですね。

吉田

東京精密としても、できるだけ今まで評価できなかったものを見えるようにしようということで、日々取り組んでおりますので、新しいのが出るたびにご紹介にあずかると思います。

今後の課題と展望

CKD株式会社の今後の展望

CKD株式会社の今後の展望

吉田

最後に、今、モノづくりが大きく変わろうとしていると思うのですが、その中でCKD株式会社の今後の展望があれば、お聞かせいただけますか?

奥岡

人手不足に対しては自動化が進み、環境に対してはEV・電動化、また、大量生産・大量消費から、サーキュラーエコノミーへと変化していくと思いますので、それぞれの社会課題に向き合ってご提案したいです。

 

環境目線ではGX、DXには欠かせない半導体、リチウムイオンバッテリーなど2次電池の事業、脱炭素化に向けた水素の利活用にしっかり取り組んでいきたいと思っています。また、空気圧機器から電動危機へと移行されるお客さまが多いものですから、電動事業には力を入れたいと思っています。

それから、商品単体ではなくユニットやシステムでお客さまの課題解決に貢献し、それにより、メンテナンスもビジネスにつなげていくことを目標にやっています。

吉田

お話を伺っていて、当社の状況と非常に似ていると感じました。

東京精密の精密測定機器事業に関してですが、今まで検査室の中で使っていた測定機が、生産品質を上げるために現場の生産ラインの中で使われ出しており、自動化が必要とされています。当社も自動化をキーワードに取り組んでいて、センサ類の提供などでCKD株式会社の自動化のシステムと一緒になって取り組めたら面白いなと思っています。

また、東京精密では自動車の内燃機関向けの測定機からEV化に向けて大きく変わってきており、バッテリー向けに充放電試験機に取り組んできたのですが、そこでも自動化が言われています。御社もバッテリー向けにいろいろ取り組みたいとのことなので、ぜひご一緒にバッテリー業界に向けた動きもできたら面白いと思いますね。

奥岡

前後工程ですものね。ぜひいろいろとご協力させていただければと思います。

トップ対談

吉田 均

株式会社東京精密 代表取締役会長CEO

吉田 均

1983年4月

(株)東京精密 入社

2002年4月

計測社執行役員 汎用計測グループリーダー

2005年4月

計測社執行役員常務

2005年6月

取締役就任

2015年4月

代表取締役社長CEO就任

2022年4月

代表取締役会長CEO就任(現任)

2016年

NDマーケティング大賞受賞

2020年

日本精密測定機器工業会会長就任(現任)

奥岡 克仁

CKD株式会社 代表取締役社長

奥岡 克仁

1991年4月

シーケーディ(株)(現CKD(株))入社

2008年10月

生産本部小牧機器事業所 生産管理部長

2015年6月

執行役員 コンポーネント本部長

2016年6月

取締役執行役員 品質・安全担当 コンポーネント本部長

2018年6月

取締役 常務執行役員 品質担当 コンポーネント本部長

2019年6月

代表取締役 専務執行役員 品質・環境担当 コンポーネント本部長

2020年6月

代表取締役 専務執行役員 管理担当 経営企画部長

2021年6月

代表取締役 社長執行役員COO 管理管掌

2022年6月

代表取締役社長COO(現任)

CKD株式会社

CKD株式会社

1943年、日本航空電機株式会社として設立。製造工程の自動化を実現する自動化技術や水・空気・ガス・蒸気・油などの流体を制御する流体制御技術を基盤に、自動機械装置や空気圧・流体制御機器などを開発、生産する。同社の機器は、半導体や自動車、医薬品、食品など幅広い製造現場で利用され、世界のモノづくりを支えている。

※ 2023年9月時点の情報です。

製品情報

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