三次元座標測定機がもたらした体制の変化が開発成功につながる
ロケットの開発・設計から打ち上げ・運用まで自社で手がけ、「宇宙の総合インフラ企業」を目指すインターステラテクノロジズ株式会社様に、事業内容と製品導入のいきさつ、その効果について伺いました。
インターステラテクノロジズ株式会社について
御社の事業内容について教えてください。
ロケットの開発・設計・製造と、打ち上げ運用、小型人工衛星の開発を行っています。2019年には観測ロケット「MOMO」3号機が国内民間単独で初めての宇宙空間到達を達成しました。現在、小型人工衛星打ち上げ用ロケットの「ZERO」、小型人工衛星を開発しています。
御社はどのような強みをお持ちでしょうか?
当社の特色としては、「一気通貫」「垂直統合」と我々は呼んでいるのですが、大きく二つあります。
まず、「一気通貫」ですが、ロケットの設計、製造、打ち上げ、運用まで全て自社で行っています。多くの企業が分業でかかわる体制では、各企業の責任分担を明確にする必要があります。そのため、それぞれの企業に高いレベルの品質保証を求め、結果的にコストが高くなってしまいます。また、海外にはエンジンをロシアから輸入している企業もありますが、昨今の情勢により供給が止まるなどのリスクがあります。
しかし当社では、自社で全ての部品を設計・開発し、内製または外部の協力会社で製造した部品を当社で受け入れて組み立てるため、部品ごとの品質基準を当社の責任において適切なレベルにすることが可能になります。また、外部調達のリスクを受けにくいことも強みとなっています。
次に「垂直統合」についてです。当社は国内で唯一、ロケットと小型人工衛星の開発を自社で行っており、ロケットの発射場を自社で持っています。これらを活かして、将来的にはロケットを軸に、発射場-ロケット-人工衛星間のサービスを提供するビジネスモデルを展開していく予定です。
当社も開発している小型人工衛星は、GPSや通信、リモートセンシングなどを通じてすでに幅広い分野でデータが活用されており、今後もさらに需要が伸びることが期待できます。
一方でロケットの開発はお金がかかる割に成果が見えにくい分野です。自社の開発成果はすぐに売り上げに直結しないにもかかわらず、設備以上の能力のエンジン試験はできないため、試験設備には高額の初期投資が必要です。しかし、日本ではさまざまな制約があり自社で試験設備を整える必要があります。当社に出資いただいた資金の大半がそうした設備に充てられています。
スタートアップの企業としては金銭的にも厳しいところではありますが、開発段階で設定した数値の妥当性を検証するための試験を自前の設備で行い、フィードバックできるというのは、間違いなく我々の強みの源泉になると考えています。人工衛星とその輸送を支えるロケットの両輪を事業として進めており、ロケットの開発を自社の設備で行っているところは当社の大きな特色です。
製品採用のきっかけ
東京精密とのお付き合いのきっかけ、「ZEISS CONTURA」を導入の決め手を教えてください。
三次元測定機の導入候補となる精密測定機器を調べると、カールツァイス社の製品が航空宇宙の製造業界において多く使用されていました。当社が取引させていただいている企業様でも、CONTURAが採用されています。
決め手となったのは、製造を依頼している企業と同等かそれ以上の測定精度を持つ機種で受入検査をしたいということでした。ロケットエンジンの部品は複雑な形状のものが多く、部品によっては測定時に測定子の先端を細かく割り出しながら測定を行います。他社の測定機と比べ、割り出し角度が細かく設定できるところがより適していました。
製品導入後の感想
「ZEISS CONTURA」を導入していかがですか。
協力会社で製造された部品の受入検査と、試作品の検査の際に使っています。今回が初の三次元測定機の導入のため四苦八苦するところもありますが、その都度サポートの方に相談しながら使っています。
導入の予想外の効果としては、社内での検査に対する考え方を含めた体制構築の部分が大きく進んだところですね。従来使用していた測定機はそれなりの管理レベルで、MOMOの開発までは品質についても加工者や現場レベルでの調整がある程度許容されていました。ZEROでは部品に求められる精度が高くなり、検査を省いてしまうと手戻りが増えたり、現場での解決が難しくなったりといった問題がありました。今回の導入を機に、品質管理の組織・体制を整え、測定のフローを策定する方向に変化しました。測定室のセキュリティ強化、操作者の指定など、ZEROの開発を成功させるためにきわめて重要な役割を果たしてくれたと思っています。
精密測定機器、東京精密に期待すること
今後、精密測定機器やサービスに対してのご要望はありますか
ロータリーテーブルを含めたシミュレーションができるといいなと思います。当社の測定物は複雑な形状の物が多く、またいろいろな試験や加工の工程を行き来します。三次元測定機で使用しているシミュレーションソフトでは、ロータリーテーブルも含めたシミュレーションができません。前工程の間に、先にプログラムを作り、シミュレーションができれば、リードタイムをさらに短くすることができます。また、北海道にサービス拠点ができれば、直接相談をしやすくなり助かります。現状もリモートで十分バックアップいただいていますし、難しいとは思いつつも、ぜひ北海道に進出していただけたら嬉しいです。
インターステラテクノロジズ株式会社
開発部
第6セクションマネージャー
堀尾 宗平 様
インターステラテクノロジズ株式会社
開発部
試作開発Gr
安井 朋香 様
インターステラテクノロジズ株式会社
低価格で便利な宇宙輸送サービスを提供することで、誰もが宇宙に手が届く未来の実現を目指すスタートアップ企業。観測ロケットMOMOでこれまでに計3回、国内民間企業単独として初めて且つ唯一の宇宙空間到達を達成、次世代機となる小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を本格化させています。人工衛星開発事業も手がけており、国内初のロケット×人工衛星の垂直統合サービスを目指しています。
※ 2023年10月時点の記事です。
製品情報