白色干渉測定機で機械部品の損傷を見極める
日本で初めて鉄鋼の高周波焼き入れ技術を開発するなど、高い開発力を持つ応用科学研究所様に、製品導入のきっかけや印象について伺いました。
財団法人応用科学研究所について
研究所の概要について教えてください。
応用科学研究所は大正時代、京都大学工学部電気工学科の青柳教授がタングステンフィラメントの研究を始め、その研究所として始まりました。その後、京大の鳥飼利三郎先生が理事長をされ、鉄鋼の高周波誘導加熱方式による強化処理技術(高周波焼入れ)を日本で初めて開発しました。さらにプラズマ窒化技術に関する研究も進め、これら2つは現在、ほかではやらないような難度の高いものを扱っています。そして、社会が求める新たな研究開発のため、2014年には機械基盤研究施設を立ち上げ、CADで設計したものを製作してその場で幾何形状精度を測り、冶金学的な性質検査も同じ場所でできるようになりました。
製品採用のきっかけ
東京精密の測定機を導入したきっかけについて教えてください。
若い頃しばらくドイツにいて、帰国後Carl Zeiss社より三次元測定機を日本で販売したいから手伝ってくれと頼まれました。そのころのCarl Zeiss社の担当者に東京精密さんを紹介されて以来、親しくさせていただいております。そして機械基盤研究施設の立ち上げにあたり三次元測定機の導入が不可欠と思い、今の御社の社長(現 代表取締役会長COO 吉田 均)とも懇意だったので、御社からCarl Zeiss社の測定機を導入させていただきました。
製品導入後の感想
東京精密の測定機について、どのような印象をお持ちですか?
実際に使わせていただいて、結構満足しています。白色光干渉の測定機は、外乱の影響を受けたり非常に敏感だといった話はよく聞くのですが、東京精密さんの測定機はそれほど気難しくなく使えており、そこは大したものだと思います。
Opt-scopeは、事故が起こった機械部品の損傷面を見るという場面で一番よく使っています。私の専門は機械部品、とくに歯車が潰れたときに、その原因や対策を考察することです。損傷面を細かい精度で見られる測定機はなかなか難しいのですが、表面の形状を写真のように見られるという点で重宝しています。普通の写真だと、光の影響を強く受けてしまい、写真の撮り方によっては、事実と違う印象を人に与えてしまいます。しかし、Opt-scopeの場合には、オプティカルフラットからの距離を精密なマップとして測る機械なので、そういった影響は受けませんし、かなりいろいろなことがわかります。
測定機の今後
今後、測定機はどのような場面で活躍していくとお考えですか?
鉄鋼の品質というのは、機械にとって非常に重要ですが、現在では価格面の事情で外国製など安価なものを使いたいという要請があります。そういった際に、思っていたものと実際の品質が違うことがあり、トラブルを生むこともあります。現在では、その品質に関して最適な判定手段がありません。そういった場面でOpt-scopeなどをうまく利用すると良い判断ができるようになるのではないかと思います。実現すれば、今までとは違う分野の人が興味を持ってくれます。これは今後の課題として一緒に研究していければと思います。
Opt-scopeは単なる表面粗さ測定機というよりも、精密な三次元の形状測定機であるというメリットを打ち出していくべきだと、私は考えます。「粗さ」と「形状」というのは、単に表面の3D幾何学形状のどれほどの周波数成分を取るかだけの差です。そして、機械にとってはどちらかというと形状、低周波成分の方が重要です。そこを非接触で、3D立体形状として精密な寸法精度とともに見られるというのはなかなか有用なものです。
計測機器、東京精密に期待すること
測定機について不満はありますか?
被験物を測れるか測れないかというのは、やってみなければわかりません。機械部品の形状によっては、レンズ周りがぶつかってしまって測れないといったことがあります。これは、Opt-scopeだけの問題ではなく、測定機一般に言える非常にプリミティブな問題だとは思いますが、そこをクリアできるとユーザとしてはありがたいと思います。
計測機器について、また東京精密に対して期待することはございますか?
測定機というのは難しいもので、使う人によって要求が全く異なります。できるだけ真に近い値を求めるところもあれば、それほどの精度を必要としないところもある。難しいことですが、精度だけに限らず、さまざまな面で用途に合った対応をすることが大事ではないでしょうか。
応用科学研究所
常務理事
兼 京都大学名誉教授
久保 愛三 様
財団法人応用科学研究所
大正6年、京都大学工学部電気工学科青柳栄司教授が青柳研究所を創設。後に応用科学研究所となる。工学系で多方面の研究実績を上げてきたが、中でも鉄鋼の高周波誘導加熱方式による強化処理技術(高周波焼入れ)の発祥の地として、独自の技術を開発・運用している。機械部品の長寿命化・高性能化・省資源化に関する研究も行い、日本の機械工業、基盤技術の維持発展に寄与することを目指し、研究を続けている。
※2016年11月時点の記事です。
製品情報