測定技術の進歩が製品技術の進歩を支える
自動車の空調機器部品、ディーゼルエンジン制御システム部品等、さまざまな自動車部品を生産する株式会社デンソー九州様に、モノづくりへのこだわり、製品の導入のきっかけについてお伺いしました。
株式会社デンソー九州について
事業内容について教えてください。
1993年に当時の日本電装(株)北九州製作所として操業を開始し、自動車用エアコン部品を生産していました。2006年にディーゼルエンジン部品関係が(株)デンソーから移管され、2008年にエアコン部品の工場を拡張するとともに広島工場を統合し、2021年には、東広島工場を統合しております。
現在の拠点は本社・北九州工場、それから広島工場、東広島工場です。会社としての生産品目はサーマル事業(インタークーラー、ラジエーター、エンジンクーリングモジュール、配管、エアコンユニット)、視界事業(ウォッシャータンク、ワイパーリンク)、パワトレイン事業(ディーゼルエンジン用力インジェクタとその部品、機電モジュール、フューエルポンプモジュール)です。
北九州工場の概要についてもお聞かせください。
第1工場ではエアコンユニットとラジエーターを製造しており、それぞれ部品の成型・製造後にユニット組み立てまで一貫工程で行っています。
ユニットの組み立ては、手組みとロボットにより自動化された2つのラインで行っています。従来、全て手組みで行っていたものを、作業者の勘・コツなどをロボットに反映しながら自動化を進めてきました。しかし自動化には、部品点数やロット数量などによってそれぞれ向き、不向きがあるため、現在は協調ロボットなどを導入して、手組みと自動化ラインを合わせたベストな組立ラインを作ろうと取り組み始めています。
もともと北九州工場の手組みラインは高い評価を受けており、海外からもラインの改善や動線について見学が来るほどでしたので、ベストな組立ラインを作り上げ、改めて世界に発信したいと思います。
第2工場では、ディーゼルエンジン部品のインジェクタ(ディーゼル燃料を超高圧でエンジンに噴射する部品)の部品加工・研削・組み立てをしています。
工場は、部品を精密加工する切削ライン、その後の検査部門、組付けラインで構成されています。ディーゼルエンジン向けのインジェクタは高圧のものでは2,500~2,800気圧対応のものもありますが、当工場では2,000気圧対応のインジェクタを製造し、国内外の自動車メーカーに供給しています。エアコンユニットというデンソーグループの中でも大きい部品を作っている工場と、インジェクタ部品のような微細な精密加工が必要な小さい部品を作っている工場が一緒になっていることが、当工場の最もユニークな特徴ですね。
工場内には、技能伝承を目的とした技能道場や社内開発したテキストの閲覧コーナーも設置されています。
また、工場自体のカーボンニュートラルの活動を推進しており、2035年を目標に工場で使用するエネルギーを全て再生可能エネルギーへ転換するように進めています。北九州工場が立地している北九州市は、日本製鉄八幡製鉄所が立地し、水素タウン構想、風力発電など産業投資が盛んな地域なのですが、当社は市と提携して、市内の異業種のメーカーや産業廃棄物処理業者さんなどに伺い、脱炭素について案件を出してアドバイスをさせていただくという活動も行っています。
製品採用のきっかけ
東京精密とはいつ頃からお付き合いさせていただいているのでしょうか。
1998年に、初めてデンソーグループでディーゼルエンジン部品の海外生産を立ち上げたときからですね。ハンガリーに生産拠点を設立し、ディーゼルエンジンの電気制御の分配型ポンプという部品の製造ラインを立ち上げたときになります。
他社の粗さ測定機も持っていたのですが、実際に現地に行って測定機で測定し、その結果を日本での測定結果と比べたときに、同じ波形が出なかったんですよ。どんなに頑張っても合わず、紆余曲折を経て最終的に測定機を全部揃えることになり、全て東京精密の測定機に変えたのが始まりです。そこからインジェクタ部品の測定には、全て東京精密の測定機を使用していると思います。
同じモノを測ったらデータ数値だけではなく、測定結果の波形や形状、特に微妙な波形の差異を見てOK、NG の判断をしますし、同じモノの同じ箇所を測ったら同じ波形が出てこないとおかしいですよね。特に海外拠点で現地従業員に説明するときも、同じ波形が出てこないと説明しにくいですし。その点で、同じ波形や形状で説明できるのは助かりました。他の拠点での生産を立ち上げた時も、最初から東京精密の測定機を入れています。
製品導入後の感想
東京精密の測定機は、御社の生産活動に対して貢献できていますでしょうか。
非常に貢献してもらっていて、これがないと困るというところです。
精密加工は、測定機の進歩がないと成り立たないんですよ。どこの範囲まで測れるか、どこまで精度よく測れるか、それによって加工も精度がどんどん上がっていくので、測る機能は非常に大事ですよね。東京精密さんの測定技術が進歩すると、製品技術が少し進歩するって形で。「測れないものはつくれない」と言っておられますが、測定はすごく大事。特に高精度が求められるインジェクタ部品を作っているからこそ、強く思いますね。
精密測定機器、東京精密に期待すること
東京精密の計測機器に対する期待、ご要望はありますか。
いつもこういうモノを測りたい、こういう測り方をしたいと言うと、要望に沿って頑張って下さっています。時間的にすぐはできないかもしれないけど、ずっとそれを追い求め、結果にしていただいていると思っています。また、24時間稼働しているのが止まってはいけないので、何かトラブルがあったときにすぐに来てもらえるのが非常に助かりますね。
技術面でのお願いとしては、インジェクタの特定の部品の寸法・形状を非接触で測って、流体研磨後の微細な形状がどうなっているのかを見たいということです。インジェクタは部品を組みつけた後、最終的に性能検査にて製品のOK、NG判定を出すのですが、不思議なことに100%合格品の部品を全部組み合わせても合格品にならない製品が出てくるのです。そこで、何が違うのかと。それは噴出口の形状一つ一つがどうなっているのか、組立後にNGになった部品を測ってその原因を見つけたいという思いがあります。図面には残らない、今までベテランの人が手作業でやっている勘・コツの部分が最終製品にすごく効いていた、ということがあったりする場合もありますので、そういったものはできるだけ図面に残していかなければならないのですが、そのためには測定で見えるようにしていかなければ結局わからないので、是非期待したいところです。
株式会社デンソー九州
取締役
山近 亮一 様
株式会社デンソー九州
生産技術部
製造企画室
担当次長
佐藤 寿彦 様
株式会社デンソー九州
1993年
日本電装(株)北九州製作所として操業を開始。
2006年
(株)デンソー北九州製作所として(株)デンソーから分離・設立。
2014年
(株)デンソー九州へ社名変更。デンソーグループの西日本における主力製造拠点として、サーマル事業、ディーゼル事業、機電モジュール等、自動車に搭載されるさまざまな部品を製造している。
※ 2023年10月時点の記事です。
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